2014年10月の個人山行報告

      

  10月個人山行

苗 場 山(2145m)

     標高2000mを越す南北4km東西1kmの山頂天上庭園に無数の池塘が点在

     北越雪譜 二編四の巻 「苗場山」
     「苗場山は越後第一の高山なり、魚沼郡にあり、登り二里という。絶頂に天然の苗田あ
     り、依りて昔より山の名に呼ぶなり。峻岳の戴に苗田ある事甚だ奇なり・・・・・・
     そのさま人のつくりたる田の如き中に人の植たるように苗に似た草、生えたり‥‥‥」

  9月後半が、アルプス辺りの紅葉秋山シーズンとなるが、今年は台風の影響で天気が悪い。
 様子を見ていたら次々と台風が発生、このままでは行けなくなってしまうと。台風の合間を狙っ
 て、10月1日〜5日に草紅葉の広がる風景を求めて尾瀬と苗場山の池塘群を訪れ、その道中で
 谷川岳に寄って来た。

  苗場山には多くの登山コースがあるが一般的に使われているのはアクセスが良いため首都圏
 からの日帰り登山が可能な。スキーリゾートで知れた、湯沢から入り。苗場山の西側、神楽スキ
 一場の[和田小屋からの新潟県コース]と。
 奥深いため首都圏からも近畿からでも道中が長く、アクセスも悪いが、途中の中津川渓谷は平
 家伝説の残る秘境の秋山郷とあって。自然派には、見どころ、楽しみどころが多い苗場山の東側。
 [長野県の秋山郷からのコース]が、よく歩かれている様子だ。
 今回は秋山郷のある長野県下水内郡栄村の小赤沢三合目登山口から取り付く。
 前日の谷川岳から、一旦、新潟県の津南町に入り、次は南下して長野県へと群馬、新潟、長野
 の三県を巡り、中津川渓谷を秘境秋山郷へと上がって行く。
  今回、このコースを選んだ大きな理由が秋山郷の温泉群だ。秘境の温泉とあって上杉謙信の隠
 し湯とか川原に湧き出す露天風呂、江戸時代の藁葺屋根の温泉とか選びがたい名湯が多くある
 が今回、寄ったのは、登山口への林道に近く。湯は鉄分が多い強塩泉なのだがゴボゴボと間欠的
 に噴出する時は無色透明で空気に触れると酸化して赤くなり湯船の中では濃く濁った赤茶色の
 湯で、いかにも鄙びた湯治場の温泉の趣がある小赤沢温泉だ、ここで至仏山、谷川岳を巡ってき
 た疲れを癒して。翌日、三合目の登山口から苗場山へと向かう。
  駐車場のある小赤沢3合目の標高は約1300m、山頂までの標高差は約850m。
 データー的には高越山より低い標高差とあって、安易な日帰り登山の印象だが。ガイドブック
 のタイムが登り3時間半。下り2時間50分とあって、途中にちょっと手強い個所がある。
 3合目登山口から狭い尾根道に取り付く。標高が高いとあって、すでに廻りの木々はクロペ
 (檜)や黄葉したブナやカンバなどの樹林帯の中だ。道中には一合毎に道標が立てられ、現在地
 の標高と次の合までの所要時間を教えてくれる。1700m付近までは、なだらかな尾根歩きだ
 が、やがて道は南へ90度方向転換して急な斜面を巻きながら登るようになり。だんだんと傾斜
 が急になり。ロープや簡易な鎖がっけられた岩場も現れてくる。1900m付近から2000m
 の8合目付近までが特にキツイ。何度か足を止めて。[白]かいの鳥甲山や渓谷の紅葉を眺めて
 一息つきながら登って行く。
 2時間強ほどで2000m付近の坪場に至り。数知れぬ多くの池塘が点在する雲上庭園の一端に
 足を踏み入れる。
  ここは南に龍の峰を望む絶景ポイントだ、展望も開け、二百名山の鳥甲山や昨日の谷川連峰は
 目の前だ、遠く西に北アルプスの山並みが遠望でき、富士山も見えるらしいが南からはガスが沸
 き起こって残念ながら見通しが利かなかった。
  坪場からは本道が始まる。この広大な南北4kmほどもある山頂に広がる空中庭園の草紅葉
 を眺めながら。先はどの急な登りから一変して。なだらかに伸びて行く本道を小一時間ほど歩く
 と、この苗場山では唯一の山小屋になった(もう一軒あった遊仙閣は廃業し既に無い)自然体験
 交流センターの屋根が見えだし、山頂は直ぐだ。三角点は小屋の直ぐ傍に、高原の小高い丘の上
 といった感じの広場に立っている。(一等三角点、点名 苗場山、標高2 1 4 5.23m)
  池塘の広がる光景と言えば、まずは、尾瀬ヶ原なのだが。今回、その尾瀬と苗場の両山を巡っ
 た印象としては。尾瀬は、まわりを至仏山や燧ケ岳、といった高山に囲まれ、周囲の山々から流
 れ落ちる水が豊かに流れる盆地状の湿地にできた池塘。対して苗場は周りの山々を見下ろす標高
 2000m以上の山頂台地に広がる溜池状の池塘と舞台は正反対の光景だった。はてさて初
 夏の高山植物が咲き乱れる頃は、どのような光景の対比が見られる興味深い。できれば、花の時
 期にまた、この山を訪れたいものだ。

  追記 尾瀬・燧ケ岳の見晴新道は台風の被害で通行止めになっています。来シーズンには運用
 できていると思いますが来シーズン早々に行かれる際は事前確認を。